「筋膜」と「腱膜」について


 最近、「筋膜剥がし」「筋膜リリース」とかの言葉がテレビでも頻繁に登場するようになってきました。
 「筋膜」とは字の如く筋肉を包んでいる膜のことであり、ラテン語のFascia(ファシィア)を日本語にしたものです(*本来は筋膜だけでなく、内臓の膜、骨膜、靱帯や腱までも含まれます)。筋膜には浅い脂肪組織と深い脂肪組織の間にある浅筋膜と深層脂肪組織と筋肉の間にある深筋膜があり深筋膜が一般的に使われている「筋膜」のことです。

 そして深筋膜は、「腱膜筋膜」と「筋外膜」の2つに分けられます。腱膜筋膜とは名前の通り腱の様な筋膜で、全身をボディスーツの様に包んでいます。1つの筋が収縮すると、この腱膜筋膜が隣り合った筋に力を伝えて、人間の滑らかな動きが成立する仕組みになっています。
 筋外膜は「筋上膜」とも呼ばれ、腱膜筋膜下に接している筋膜です。この筋膜が筋周膜と共に骨へ付着し、1つひとつの関節を動かしています。腱膜筋膜との違いは、腱膜筋膜が全身の筋を包んでいるのに対し、筋外膜は1つの筋を包んでいることです。また筋外膜には痛みを感じる受容器(センサー)が多く存在し、筋外膜の動きが悪くなると痛みを発生させやすくなってしまうのです。
 なお筋膜は結合組織に属し、組織学的には筋組織に属する筋肉とは全く別物になります。

 

 さて、筋肉の両端にあって、筋を骨に付着させる仲介役の結合組織の束が「腱」(筋肉が赤い部分、腱が白い部分)ですが、膜と混同しやすいのが、「腱膜」です。腱膜は腱を覆う膜というより、腱が膜状に広がったものです。

 我々が注意している足裏の痛みの中に「足底腱膜炎」という疾患があります。医学書によっては「足底筋膜炎」と記載されているものもありますが、厳密に言えば「足底全体を覆う筋膜ではなく、腱膜の1つである足底腱膜自体の炎症」ですので、大変恐れながら「足底腱膜炎」が正しいかと思います。