足の第2~5指脱臼について

 

今回は足の第2~5指の脱臼について、医学書に存在しない脱臼という事で話をさせて頂きます。

 

まず最初に本を2冊紹介いたします。これは我々の業界である柔道整復専門学校で使われている柔道整復学の理論と実技の教科書であります(*現在は一部改訂)

この2冊の中で、実は私が今から紹介する足の第2から5指の脱臼、つまり人差し指、中指、薬指、小指の脱臼は何故か書かれておりません。唯一理論の方で、母指、つまり親指の脱臼が書かれているだけです。


そこで当院にある足関連の医学書、15冊について全て調べてみましたが、やはり足の2~5指の脱臼の事は書かれておりません。しかしながら当然、日常的には遭遇します。なので本脱臼は「医学書に存在しない脱臼」といえるのであります。そこで今から当院で最近来院された症例を説明しますが、その前に雑学として、足指の長さについて少々話をさせて頂きます。

親指と人差し指の長さを見て。親指の方が長い場合をエジプト型、人差し指が長い場合をギリシャ型、両方が同じ場合をスクエア型と呼んでいます。ちなみ日本人は約8割がエジプト型と言われていますが、高齢者になると、スクエア型になっていきます。


まず1つ目の症例は39歳の男性です。「人差し指をケガした」と言って来院されました。この男性の足ですが、指の長さをみると、人差し指が長いギリシャ型であります。やはりこのギリシャ型は、人差し指をケガしやすいタイプなのです。しかし外見上はあまり変化がないので、レントゲンを撮りました。すると先端の第1関節の上の骨が右側にズレているのが確認されました。よって、これは人差し指第1関節の亜脱臼であり、我々の専門用語ではこれを第2指DIP関節不全脱臼と呼んでいます。

原因は柔道をしていて、ちょうどこのように爪先立ちの恰好になった瞬間です。相手から左足払いという技をくらい、その衝撃で亜脱臼してしまったのです。それでも治療の経過がよく、8週で完治となりました。


次に登場するのは58歳の女性です。サンダルを履いて、犬の散歩をしていました。そんな時、横からおそらく敵対し合うような犬が現れたのか、突然急に走り出したのです。するとたまたま首の紐が足の薬指と小指の間に挟まれていて、小指が思いっきり外側に引っ張られた感じとなりました。


来院された時は小指が根元から外側を向いて、脱臼していました。これを我々専門用語では第5指MTP関節脱臼と呼んでいます。

 

我々柔道整復師はこのように明らかに脱臼していると判断した場合、徒手整復で、脱臼した骨を元の位置に戻します。そこでこの時も頭の中で脱臼状況をイメージして整復し、そして写真のように合成樹脂という副子で固定しました。それからレントゲンを取り、関節が元に戻った状態を確認したのであります。

3週目に入って、経過も良好でこの日で副子を外し、結局9週で完治としました。


3例目は、珍しい薬指の脱臼です。これは業界用語では第4指PIP関節脱臼と呼んでいるもので、先端から数えて第2関節の脱臼で、より稀な脱臼であると思います。原因は67歳男性が提灯を外す作業を行っていて、1Ⅿの程の高いトコから、脚立に飛び降りた時、たまたまこの脚立のフックがかかっていなく、足が乗った瞬間、脚立が崩れて薬指が突き上げられ、脱臼したのであります。


この脱臼も徒手整復により、薬指を元に戻しました。そのまま当院で治療を続け、11週後、爪先立ちで体重もかけられるようになり、完治と致しました。


このようにたまにではありますが、教科書や医学書に記載されていないような脱臼、そして骨折も日常には十分起こりえます。

 

 なので我々は常日頃から広い視野でもって、あらゆる可能性を想定し、治療に取り組むべきではないかと、考えております。

(*本文、スライドは2017年日本柔道整復接骨医学学術大会で発表した内容を加筆修正したものです。)