ツボと筋膜

腰のツボ

 私がギックリ腰等の症状に対し、腰部(第1~第5腰椎の範囲)の中で用いる経穴(いわゆるツボ)で、代表的なものを3つほど申します。

 ①腎兪(じんゆ)-直立した時、肘がわき腹に当たる位置と同じ高さの背骨から、左右外側に指幅2本ずれたところにあります。(*対象組織は腰背腱膜で、第2・3腰椎棘突起間の外1寸5分部)

②志室(ししつ)-左右の腎兪から、それぞれ外側へ指幅2本ずれたところにあります(*対象組織は広背筋で、第2・3腰椎棘突起間の外3寸部)

③大腸愈(だいちょうゆ)-骨盤の左右上端を結んだ線と同じ高さの背骨から、左右外側に指幅2本ずれたところにあります(*対象組織は腰背腱膜で、第4・5腰椎棘突起間の外1寸5分部)
 
 このツボの位置は負傷個所と必ずしも一致しませんが、スタッフとのミーティングの際に大まかな部位の位置確認として、ツボ名を出して説明しています

筋膜①

昨年ぐらいから、「筋膜剥がし」「筋膜リリース」「ファシィアリリース」とかの言葉がテレビでも頻繁に登場するようになってきました。そこで今回は筋膜についての説明です。
「筋膜」とは字の如く筋肉を包んでいる膜のことであり、ラテン語のFascia(ファシィア)を日本語にしたものです。この単語はドイツ語でいうbnude、すなわち物を包んだり、結び合わせたりする帯を意味します。
よって本来は筋膜だけでなく、内臓の膜、骨を覆っている骨膜、関節を連結している靱帯や筋肉を骨とくっつける腱までも含まれます。したがって筋肉を包む膜を意味する単語は、正式には筋肉の接頭語であるMyoを付けたmyofasciaであり、日本語訳では筋筋膜となります。
さて、皮膚から筋肉までは、間に皮下脂肪を含め、幾つかの層が重なってます。
もっと細かく説明しますと(表面から)皮膚の表皮と真皮、皮下組織の浅層脂肪組織と深層脂肪組織となり、浅層脂肪組織と深層脂肪組織の間にあるのが浅筋膜、深層脂肪組織と筋肉の間にあるのが深筋膜であります。
浅筋膜は皮膚が刺激を受けた時に深筋膜の受容器が過剰に反応しないためのクッションの役割をしています。
そして、深筋膜こそが一般的に使われている「筋膜」のことで、これについてはまた後程説明させて頂きます

筋膜②

今日は、我々が施術で最も重要視している「深筋膜」についての説明です。
 深筋膜は、「腱膜筋膜」と「筋外膜」の2つに分けられます。腱膜筋膜とは名前の通り腱の様な筋膜で、全身をボディスーツの様に包んでいます。1つの筋が収縮すると、この腱膜筋膜が隣り合った筋に力を伝えて、人間の滑らかな動きが成立する仕組みになっています。
 筋外膜は筋上膜とも呼ばれ、腱膜筋膜下に接している筋膜です。この筋膜が筋周膜と共に骨へ付着すし、1つひとつの関節を動かしています。機能・役割は筋の保護、収縮の制限、そして収縮した力の伝達です。腱膜筋膜との違いは、腱膜筋膜が全身の筋を包んでいるのに対し、筋外膜は1つの筋を包んでいることです。どちらの筋膜とも筋を包み、様々な組織を結び付けているのですが、この筋外膜には痛みを感じる受容器(センサー)が多く存在しているため、普段の生活においてこの筋膜の動きが悪くなると痛みを発生させやすくなってしまうのです。
 組織には上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織と4つありますが、筋膜は筋組織ではなく、支持組織に属します。
支持組織には、結合組織、軟骨組織、骨組織、血液・リンパと4つあり、筋膜は結合組織です。結合組織は器官の内部など身体の至るところの間隙に入り込んでいて、線維芽細胞、マクロファージ、肥満細胞、形質細胞、脂肪細胞、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好中球などの細胞があり、膠原線維、細網線維、弾性線維といった線維とヒアルロン酸とコンドロイチン酸などのムコ多糖類など細胞間質からなってます。
 筋外膜は最外層にあることから丈夫な交織密性結合組織と分類されています。密性結合組織の特徴としては、細胞外に膠原(コラーゲン)線維などの線維性の成分がメインとなり構成されており、外力に対して強い抵抗力を持つようになっていて、膠原線維が一定方向に規則的に走行する平行密性結合組織と膠原線維の走行が一定していない交織密性結合組織に分けられます。
 筋外膜以外には、筋周膜、筋内膜があります。筋周膜はいくつかにまとまった筋繊維の束をまとめる膜であり、筋外膜と共に筋繊維の力を骨に伝える役割があります。筋内膜は筋繊維同士の動きを分離する傍ら、筋周膜へ力の伝達を行う役割があります。どちらも器官の間など最も広く分布している疎性結合組織で、筋線維の間など組織同士の間、空間を埋めるようにできています。線維成分はまばらで、その間隙には液体や塩類の貯水池としての役割があります。