

今回は令和元年9月15日、氷見市いきいき元気館で行われた「第5回氷見市民公開講座」に於いて、一般講座の部で、私が講演した「柔道整復師の手首骨折に対する応急手当について」の続編内容を当日使用したスライド、動画を交えて報告致します。
普通、人が転ぶときは手のひらを衝いて転び、そして手首のコーレス骨折を起こします。
これに対して、たまにですが、手の甲を衝いて骨折を起こす場合もあります。


このような逆の転び方で起こす手首の骨折をスミス骨折と呼んでいます。
下の写真は5年前に来院された65歳のスミス骨折です。手の甲を衝いた場合、手首のくるぶしである尺骨茎状突起部に擦り傷がみられるのが特徴です。


見た目の特徴ですが、コーレス骨折はフォーク状変形であるのに対し、スミス骨折はスコップ状変形と言われています。
レントゲンを撮って頂きますと、コーレス骨折とは反対に折れた骨が下にズレ落ちています。


事例を紹介します。
50代女性のスミス骨折。自宅の階段を降り損ねて、手首のケガをして来院され、見た目ではスコップ状変形をしていました。
どのように手を衝いたか覚えていないと言われましたが、手首のくるぶしに擦り傷があり、絆創膏が貼ってあったことから、手の甲を衝いて負傷したものと推測しました。
また他院で撮影されたレントゲンのコピー用紙を持参されましたので、見せて頂きましたところ、折れた骨が下にズレ落ちていました。
応急手当として徒手整復を行い、下方にズリ落ちている骨の位置を整復して戻して、固定しました。
その時行った実際の徒手整復法を動画でお見せいたします。


また他院で下の2枚のレントゲン写真。患者様が持ってこられたレントゲンのコピー用紙(徒手整復前)と徒手整復(と固定)後に当院が提携している病院にお願いして撮って頂いたレントゲン写真です。このように線を引くと、骨の位置が戻ったのが分かるかと思います。2日目からもずっと当院で施術を続けた結果、痛みも腫れもなくなり、手関節の機能も完全回復し、3ヶ月後に完治となりました。


ここまで柔道整復師が行っている「手首骨折に対する応急手当について」の話をさせて頂きましたが、一般市民の方々に是非御理解頂きたい6つのことがあります。
1つめとして、我々柔道整復師が緊急時に行う応急手当は法律で認められているということです。柔道整復師法という法律で、既得権があるということです。しかし法律で許されているからと言って、簡単に治せるわけではありません。
2つめとして、当然ですが、我々柔道整復師は長年の研修生活を経てから開業に至ってます。研修時代に数多くの助手の経験を積むことで、技術を習得するのです。


3つめとして、日頃からスタッフ同士で、シュミレーションを行い、常に緊急時代に備えています。技術向上です。
4つめとして、整復を行うに当たっては、怪我されたご本人、或いは付き添ってこられた御家族に応急手当の必要性を十分説明し、御了承を頂いてから行います。場合によっては、御家族に立ち会って頂くこともあります。これをインフォームドコンセントと言います。


5つめとして、地域の医療機関としっかりとした連携を行い、整復固定後はレントゲン検査を含めた医師の同意を頂いているということです。医院と接骨院の連携で「医接連携」といいます。
6つめとして、これも当然ですが、全国で開催される学会や研究会に参加して、常に情報収集しています。つまりは日々の学術研鑽です。


7つめとして、術者自身の目、指で骨折の転位状況を十分イメージするということです。
これができないと応急手当をすることはできません。
これら7つができて初めて我々柔道整復師は骨折に対し、適切に応急手当を行っているということをどうか理解して頂きたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。