肩関節脱臼について(総論)


令和2年度富山臨床接骨学研究会学術大会兼第6回氷見市民公開講座ですが、会場開催困難により、実行委員で検討した結果、市民講座は中止、学術大会は大変恐れながら、7月23日に私が当院にて実行委員の前で、「肩関節脱臼について」の講座をさせて頂き、それを収録DVD化して、他の会員方に配送するという形となりました。

 

まず総論として、肩関節脱臼の特徴を申します。

(1)全脱臼の中で最も多く、約50%を占めます。そのうち外傷性肩関節前方脱臼が約95~98%を占めます。

(2)スポーツ愛好家の成人男性の多く、その種目は柔道やラグビーです。


肩関節脱臼の発生頻度が高い理由としては、5つ考えられます。

 

(1)上腕骨頭に対して、肩甲骨関節窩(受け皿)が3:1、または4:1と極端に浅く、小さいこと

 

(2)各方向に極めて広い可動域を持つこと(運動方向と角度として、屈曲180度、伸展60度、外転180度、内転0度、水平屈曲130度、水平伸展30度、外旋60度、内旋80度等が挙げられます)



関節包や補強靭帯に緩みがあるということ

 

 *関節包前面には、上・中・下関節上腕靭帯があり、上・中関節上腕靭帯の間にはバイトブレヒト孔という穴が、中・下関節上腕靭帯の間にはルビエール孔という穴があります。

 

 *以前は「関節包がバイトブレヒト孔を通して肩甲窩と連絡しており、この穴を通って、肩関節脱臼を起こす」と言われていました。しかし最近では「上腕骨頭はルビエール孔に嵌入して、関節包を突き破って脱臼する」と、はっきり記載されています。


(4)関節の固定を筋に依存しているということ

 

 *回旋筋腱板は肩甲骨前面の肩甲下筋、後面の棘上筋、棘下筋、小円筋で構成され、徐y腕骨を関節窩に引きつける作用を有し、肩関節の安定と補強に関与しています。

 

 *肩甲下筋は小結節に停止し、肩関節の内旋作用に関与し、棘上・棘下・小円筋は全て大結節に停止し、棘上筋は肩関節の外転作用、棘下・小円筋は外旋作用に関与します。


(5)体表面上の突出した部分にあって外力を受けやすいということ です。

 

肩関節脱臼の分類としては

(1)前方脱臼が最多(95~98%)の他、(2)後方脱臼 (3)下方脱臼 (4)上方脱臼がありますが。上方脱臼はほぼあり得ないです。