肩関節脱臼について(前方脱臼論①)


肩関節脱臼の前方脱臼について説明を致します。

 

まずは発生機序ですが、介達外力によるものが多く、肩関節の外旋+外転+伸展で脱臼を起こします。

 

①上腕骨の外旋により、関節の前面が緊張し、骨頭も前方移動します。

②外転が加わり、可動域が減少します。

③更に伸展することで、上腕骨頚部は肩峰後縁に衝突し、この部がてこの支点となり、骨頭が前方に逸脱させる

というメカニズムになります。




続いて症状を申します。肩関節前方脱臼には、脱臼して上腕骨頭が烏口突起の下に存在する烏口下脱臼と、鎖骨の下に存在する鎖骨下脱臼がありますが、ほとんどが烏口下脱臼ですので、当該脱臼について説明します

 

(1)肢位は、肩関節は約30度外転し、上腕軸は外転内旋位を呈します(*ただし受傷直後は外旋位を呈しますが、肩甲下筋の作用により、内旋位となります)

 

(2)脱臼の固有症状

①弾発性固定-やや外転位の上腕に胸壁を近づけても手を離すと、直ちに元に戻ります

 

②関節部の変形

 A.関節軸の変形-上腕骨頭は前内方に偏位し、上腕軸は外転します

 B.脱臼関節自体の変形-三角筋の膨隆が消失。肩峰が角状に突出。三角胸筋三角(モーレンハイム窩)は消失します

 C.脱臼上肢の長さの変化-上腕は仮性延長します

 D.関節腔の空虚および骨頭の異常位置-肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭を触知できます